田中建設工業の特徴

田中建設工業の主な特徴として、(1)金融機関との繋がりが強く新規顧客の紹介を受けら
れること、(2)施工監理に特化しトラブルなく施工を完了させることで、顧客の
信頼を獲得していること、 (3) 同業他社に比べて元請比率が相対的に高く、高
い収益性を実現していること、の 3 点が挙げられる。
金融機関との繋がりが強く新規顧客との接点が多い
当社のマネジメントには代表取締役社長の釆澤和義氏(旧あさひ銀行出身)をは
じめとして金融機関出身が多い(図表 6)。また、18.3 期末時点の自己資本比率
は 61.4%程度と財務健全性が高いことから、金融機関から信頼も厚い。実際に、
顧客紹介のビジネスマッチング契約をメガバンク含む 6 行と結んでおり、常に
新規顧客を獲得することが可能となっている。

施工監理に特化し工事水準を安定させ、顧客の信頼を獲得

当社は施工監理に特化した業態である。同業他社は工事機械を自ら保有し一部
施工を自ら行うこともあるが、当社は保有しない。したがって、単純な原価競
争力や施工技術で当社の強みは多くないと考えるが、施工監理業務に集中し安
全管理や近隣対応を丁寧に行い、近隣からのクレームや施工時の事故などのト
ラブルなどを回避でき、工事の質を安定させることが強みとなっていると考え
る。発注者は完成後のビジネスも勘案し、工事中のトラブルによるレピュテー
ションリスクを忌避するため、トラブルなく解体工事を完了できる当社は、発
注者からの信頼を獲得していると見られる。

金融機関の紹介により新規顧客を獲得しリピート顧客とすることで、当社の受
注に占める既存顧客の比率は近年上昇していると見られる。信頼を得た顧客か
ら以前受注した案件より大型の案件を受注することに成功し、当社の足下の売
上高増加の原動力としていると考える。

元請比率の高さにより高い収益性を実現

当社は既存顧客に対して直接営業を行うことで、案件の初期段階から事業に関
わり、元請けとして工事を受注することに成功してきた。当社の売上高に占め
る元請受注比率は 18.3 期に金額ベースで 5 割程度となっている。

同業他社は
特定のゼネコンからの下請受注への依存度が高いと見られる。よって、特定顧
客に依存せず幅広い顧客に直接営業を行うことで元請として受注を獲得できて
いる点は当社の強みと言えよう。

建設業一般に言えることだが、元請受注の案件は下請受注の案件よりも採算が
良い傾向がある。当社はこの元請受注比率が高く、18.3 期の粗利率も 22.9%と、
同業他社のみならず他の建築関連企業の中でも高い水準にある。