田中建設工業 潜在需要が拡大している解体工事

国内では、解体工事の潜在需要が拡大していると考える。高度経済成長期以降
に大量に造られた建築物が老朽化しつつあるためである(図表 3)。解体工事の
一つの目安となる築 40 年以上が経過した建築物ストックが増加しており、そ
の増加速度は今後さらに加速すると予想する。
地域別にみると、首都圏では特に高度経済成長期以降に建築された建物の比率
が高い。

首都圏を中心に事業を行う田中建設工業にとって、中長期的に需要が
拡大する余地は大きく、業容拡大に追い風となると考える。

国土交通省も解体工事業の重要性の高まりを認識

重大な公衆災害の発生や、環境への配慮の必要性の高まりで解体工事により専
門性が求められるようになったこと、建築物の老朽化に伴う需要拡大などを踏
まえて解体工事の重要性が高まっていることから、国土交通省は 14 年に建設
業法を一部改正(16 年 6 月施行)し、建設業許可の業種区分であるとび・土工工
事業から解体工事業を専門工種として分離・新設した。

19 年 6 月には経過措置の終了に伴い、1 件の請負代金が 500 万円以上の解体工事を請け負う場合、工事を行う地域を管轄する都道府県ごとに建設リサイクル法に基づく解
体工事業の登録を受けなければならなくなった。

この法律変更による田中建設工業への直接的な業績影響は大きくないと考える。ただし、解体工事業がより専門的な業種であると社会的に認識され、人材採用や施主との交渉においてプラスに働く可能性もあろう。

解体建築市場は新設市場に比べて底堅い推移が予想される

アスベスト除去などの付帯工事を含めた建築解体市場は、現在年間 5,000 億円
程度と推定される。解体工事業者は零細業者を含めると現在約 1 万社強が存在
し、田中建設工業の市場シェアは 18.3 期で 1%前後と見られる。

現状の解体工事はスクラップアンドビルドに伴う需要が大半で、新設市場と解体市場の動向は連動していると考える。

野村では、新設建築市場が 17 年度から 20 年度でほぼ横ばいと安定的な推移をすると予想しており、解体市場が急激に拡大するとは見ていない。ただし、老朽化に伴う潜在需要が増加していることなども勘案すると、中長期的に解体市場は新設の市場以上に底堅く推移すると予想する